ボイス企画 かずのこ
第6話 天野家(前編)
01由香 「賢君大丈夫? 顔色悪いよ?」
01賢二 「ん……あぁ」
02由香 「先生には言っとくから、帰って休んだ方が良いんじゃない?」
02賢二 「悪いな……じゃあ頼むわ」
効果音 チャイム、ガヤ
03由香 「秀君!」
01秀一 「由香ちゃん? 教室まで訪ねてくるなんて珍しいね。どうしたの?」
04由香 「実はね、今日賢君凄く具合悪そうにしてて早退したの」
02秀一 「賢が?」
05由香 「うん。お家の人はあんまり家にいないって言ってたから、秀君には伝えといた方が良いかと思って」
03秀一 「そっか、ありがとう。少し気にしてみておくよ」
***
効果音 ドア
04秀一 「ただいま。……良かった。ちゃんと帰ってる。賢ー?」
効果音 ドア
05秀一 「賢、早退したんだって? 寝るならちゃんと布団かけないとダメだろう? それから制服脱いで楽なか……賢? おい、賢二」
03賢二 「なん…………だよ、うっさいな……」
06秀一 「お前、酷い熱じゃないか! ちょっと待ってろ」
効果音 足音
07秀一 「病院は行って……ないだろうな。風邪薬あったかな……ほら、熱計って」
間
効果音 体温計
08秀一 「8度5分……高いな」
03賢二 咳き込む
効果音 電話
09秀一 「もしもし、母さん?」
01秀一母 「あら、秀ちゃん。どうしたの? 」
10秀一 「賢が風邪を引いたみたいで……凄く熱も高いんだ」
02秀一母 「あらあら。じゃあ暖かくして寝るように賢ちゃんに言ってね」
11秀一 「母さん帰ってこられないの?」
03秀一母 「風邪くらいで大袈裟よ。賢ちゃんも小さい子どもじゃないんだから」
12秀一 「でも!」
04秀一母 「秀ちゃんがしっかりしてるからママ安心だわ」
効果音 チャイム(小さく)
05秀一母 「ごめんなさい。お客さんが来たから切るわね」
13秀一 「ちょ、母さん!」
効果音 電話(ツーツー)
04賢二 咳き込む)
効果音 鳥
14秀一 「ん……朝か。賢?」
05賢二 荒い呼吸
間
効果音 体温計
15秀一 「熱は……9度!? 下がるどころか上がってる!」
06賢二 「しゅう……にぃ……」
16秀一 「賢……」
効果音 電話
17秀一 「もしもし母さん!? お願い、帰ってきて!」
06秀一母 「秀ちゃん、なにかあったの?」
18秀一 「賢が……」
07秀一母 「賢ちゃん?」
19秀一 「昨日より熱が上がってて、僕一人じゃ病院にも連れていけない」
08秀一母 「市販の薬があるでしょう? 飲ませてゆっくり休めば大丈夫よ」
20秀一 「昨日薬は飲ませたけど、でも……」
09秀一母 「じゃあ往診してくださる先生に連絡してちょうだい。そんなことより秀ちゃん、今日は土曜日だから塾でしょう? ちゃんと遅れないで行くのよ?」
21秀一 「そんなことって……っ」
10秀一母 「あらやだ。もうこんな時間! 今から出なくちゃいけないの。じゃあね」
効果音 電話(ツーツー)
22秀一 「クソッ! 往診してくれる病院なんてこの辺りにはないじゃないか!」
効果音 電話
01秀一父 「……秀一か、どうした?」
23秀一 「父さん! 賢が大変なんだ!」
02秀一父 「賢ニがどうした?」
24秀一 「風邪を引いて、それで……」
03秀一父 「母さんはどうした?」
25秀一 「……」
04秀一父 「(溜め息)仕事か。悪いな、今アメリカで帰れない。父さんからも母さんに連絡してみるから」
26秀一 「うん……」
05秀一父 「賢二のこと、頼むな」
電話切る
07賢二 咳き込む
効果音 秀一の携帯
27秀一 「もしもし!?」
01一也 「秀一? どうしたんだ? そんなに慌てて」
28秀一 「一也……」
02一也 「あのさ、今日なんだけど……」
29秀一 「一也助けて!」
03一也 「え?」
30秀一 「賢が……賢がっ!」
04一也 「おい、賢がどうした」
31秀一 「昨日から体調崩して寝込んでるんだ。良くなるどころか昨日より悪くて……僕、どうしたら……」
05一也 「今からそっち行く! ちょっと待ってろ!」
間
効果音 インターフォン
効果音 ドア
一也の台詞と同時に
06一也 「秀一!」
06由香 「あ、お兄ちゃん!」
32秀一 「一也……」
01馬場父 「秀君、一也からだいたいの話は聞いたよ。おじさんが来たからもう大丈夫だ。一人で看病してて心細かっただろう? 偉かったね」
33秀一 「おじさん……(泣)」
02馬場父 「賢君? ……これは酷いな……直ぐに病院行くぞ!」
効果音 車のエンジン
間
01医者 「賢二君のお父さん」
03馬場父 「いえ、私は近所に住んでる者でして」
02医者 「あ、失礼しました。ご家族の方は?」
34秀一 「あの……」
03医者 「君は……賢二君の兄弟かな?」
35秀一 「はい。兄です」
04医者 「ご両親は?」
36秀一 「……仕事で……。あの、賢は……弟はそんなに悪いんですか?」
05医者 「いや、容態も落ち着いているから、点滴が終わったら連れて帰って大丈夫だよ」
37秀一 「そうですか、ありがとうございます」
効果音 車のエンジン
07一也 「本当に大丈夫か?」
04馬場父 「やっぱり良くなるまで家に泊まった方が……」
38秀一 「いえ、大丈夫です。おじさん、本当にありがとうございました。お店もあったのに……」
05馬場父 「気にしないで。後で栄養のあるものを作ってとどけるから」
39秀一 「でも……」
07由香 「風邪の時は栄養のあるものを食べなきゃダメだよ」
40秀一 「すみません、本当にありがとうございます」
08一也 「やっぱり俺だけでも残るか?」
41秀一 「気持ちだけもらうよ。一也にうつったら悪いから」
08由香 「大丈夫よ、お兄ちゃんバカだから! バカは風邪引かないって言うじゃない」
09一也 「え!? ちょ……由香酷い!」
06馬場父 「こら、あんまり大きな声出すと賢君が起きちゃうよ。……じゃあ秀君、何かあったら遠慮せずに直ぐ連絡するんだよ? いいね?」
効果音 扉