ボイス企画 かずのこ
第9話 馬場隆也再婚す
in商店街
馬場兄妹塀に隠れて様子を伺っている
茜「あれは……一也? ちょっとバカズヤ、こんなところでなにやってるの?」
一也・由香「うわああっ!」
一也「なんだ、茜かよ。脅かすなっての!」
茜「なんか前にもこんなことあったような……で、二人して何してるの?」
一也「前に家は母さんいないって話しだろ? それがどうやら最近父さんに恋人ができたみたいで……」
茜「え!?」
由香「偶然一緒にいるのを見かけて」
一也「今尾行してんだ」
一也、由香、茜塀に隠れて顔だけ出す
一也「ほら、あの人。うちの店にも最近よく来てて」
秀一「……君たちは一体なにしてるんだ?」
一也、由香、茜「うわああっ!」
由香「なんだ。秀君か」
一也「脅かすなよ!」
秀一「茜まで一緒になってなにをしてるんだよ?」
一也「実は父さんに恋人ができたみたいで……」
秀一「え!? おじさんに?」
一也、由香、茜、秀一塀に隠れて顔だけ出す
由香「ほら、あの人」
秀一「成る程。で、一也と由香ちゃんは再婚に反対って訳か」
一也「別に反対って訳じゃないよ。綺麗な人だと思うし、母さん亡くなってからもう何年もたってる。父さんが幸せなら俺も由香も相手の人と上手くやろうと思ってる」
秀一「……一也がまともなこと言ってる」
一也「うるせぇよ」
由香「ただその……どうやら相手の人には家族がいるみたいで……」
秀一「え!? それってその……つまり……」
由香「不倫ってやつ。本当お父さんなに考えてるんだか……」
秀一「あれ……? でもあの人って……」
一也「俺さ、あの人どこかで見たことがある気がするんだよなぁ……」
由香「お兄ちゃんも? 実は私もそんな気がするの」
一也「あ! 花屋に入った。プレゼントでもする気か?」
由香「うーん……会話までは聞こえないね」
秀一「茜……大丈夫?」
茜「うん……」
一也「あ、出てきた! 花はもってないな。何してたんだろ?」
由香「秀君たちも早く! 見失っちゃう!」
効果音 足音
秀一「……」
由香「あ、止まった。あそこは……ブライダルショップ!?」
茜「!?」
一也「なに話してるんだろう……って抱き締めた!?」
由香「人前でなにしてんの……ってキスしてるし!」
茜「もう嫌、これ以上みたくない……っ!」
茜、その場にうずくまる。
馬場兄妹は「道の真ん中でなにやってるのよ!」「見ちゃいけません!」等騒いでて気づかない。
秀一「……茜、大丈夫? 立てる? 一也、もうやめよう。これ以上はダメだ」
一也「そうだな……俺もちょっと疲れた。帰ろう」
***
in一也の部屋
由香「やっぱりダメ! 不倫はダメよ!」
一也「だよな!俺もそう思う!」
茜「……」
秀一「……なぁ一也、さっきの人はおじさんの恋人で間違いないのか?」
一也「ああ。よく店にも来るし、名前で呼びあってた。この間も二人でなにやら話し込んでたし」
秀一「そうか……」
一也「それにさっきの見ただろ? なんだよ。さっきから茜も元気ないし、どうしたんだ?」
秀一「いや、その……一度しか会ったことないし、違ってたら申し訳ないんだけど……あの……」
一也「なんだよ」
秀一「さっきの女性は……その、茜のお母さん……じゃないか?」
一也「あぁ。なんだそんなこと」
間
一也・由香「はああぁあっ!?」
一也「お前何言ってんの!? 笑えない冗談はやめろよ」
由香「秀君、流石にその冗談は酷いよ」
秀一「あ、……その、ごめん……」
茜「……っ」
一也「女子を泣かすなんて最低だぞ秀一! 茜泣いてんじゃねーか!」
秀一「ご、ごめん! あの、その……っ」
茜「違う……違うの。秀の言う通りなの」
一也「え?」
茜「おじさんの……ふ、不倫……相手……私のお母さんなの」
一也「あぁそう」
間
一也・由香「ええぇぇええーーーっ!?」
一也「嘘だろ!?」
茜「私だって嘘だと思いたい! 思いたいけど……っ」
一也「なにがどうなってんだよ……」
効果音 ノック、扉をあける
一也父「一也? あ、秀君と茜ちゃんいらっしゃい。……一也、何があったか知らないが女の子を泣かせちゃダメだろ?」
一也「うっさいな! 全部父さんのせいだろ!」
一也父「え?」
由香「いいからお父さんあっち行って!」
一也父「え? ちょっと由香」
効果音 扉閉まる
一也「お前んとこ、その……最近変だな。みたいなことあったか?」
茜「ううん。いつも通り。お母さん、昔からお父さんにベタ惚れで、喧嘩することはあってもとてもそんな風には……」
一也「そっか……俺ももしなんかわかったら教えるよ」
***
in立花家
祖母「茜? 何かあったの? 帰ってきてからずっと元気がないけど……」
[17:48]
茜「え? そんなことないよ」
祖母「そう? ならいいけど……」
茜母「歳って何よ! 歳って!」
茜父「だから少しは年齢を考えろと……」
茜母「もうオバサンだって言いたいの!?」
茜父「あのなぁ……」
茜母「きーっ! 何よ何よ! この間の同窓会、若い。キレイってモテモテだったんだから!」
茜父「いや、外見じゃなくて」
茜母「じゃあ何よ! 中身がオバサンだって言うの!?」
茜父「だからそうじゃなくて……」
茜母「もう! ちょっとくらいヤキモチ妬いてくれたっていいじゃない! 薫ちゃんのバカ! 浮気してやる~!」
茜「!?」
祖父「二人ともやめないか。子供たちが心配してるだろう」
茜の両親「バカなこと言うのもいい加減にしないか」「バカなこととはなによ! バカなこととは!」等喧嘩
桃「喧嘩ダメー」
楓「心配してるって言うか、呆れてるって言うか……」
穂「……お姉ちゃん?」
茜「え? あ……」
茜父「茜?」
茜の両親、茜の様子がおかしいことに気付き喧嘩終了
茜母「具合でも悪いの? 顔色が悪いわ」
茜「触らないでっ!」
茜、母の手をはたく
茜母「あ、茜……?」
祖父「茜、一体どうしたんだ」
茜「……なんでもないから。ごめん、一人にして……」
数日後
in馬場家
一也父「……あの、二人とも? 父さんなにかしたかな?」
一也「別に……。な、由香」
由香「うん」
一也父「いや……でも二人ともここ数日ずっと機嫌悪いし……」
由香「……じゃあ自分の心に聞いてみたら」
一也父「由香……」
間
一也「……ねえ父さん、母さんが亡くなってからもう随分たつよね」
一也父「あ、あぁ」
一也「再婚とか考えないの?」
一也父「え!?」
由香「!?」
一也「俺はさ、別に良いと思うよ。人から後ろ指指されるようなことさえなければ」
由香「そうね。不倫とか、他の人の幸せ壊すような関係でさえなければ私もいいと思う」
一也父「二人ともいきなりどうしたんだ?」
由香「まだしらを切るつもり?」
一也父「しらを切るも何も……」
効果音 店のドア
一也父「いらっしゃいませ」
一也「茜!」
茜「……一也」
茜父「そうか、友だちの家だったな」
一也父「茜ちゃんいらっしゃい」
茜「……」
茜父「茜、挨拶くらいしたらどうなんだ。何があったか知らないがいい加減にしなさい」
一也父「まぁまぁ」
茜父「すみません。なんだか最近ずっとこんな調子で……」
一也父「いえ、書家の立花先生ですよね。この度はお世話になります」
茜父「こちらこそご依頼ありがとうございます」
一也「父さん? あの……茜の父さんのこと知ってるの?」
一也父「ん? あぁ。この間抹茶フェアーのメニューを書家の先生に書いてもらえることになったって話したろ? それが立花先生、茜ちゃんのお父さんだったんだよ」
一也・由香「えぇえっ!?」
一也父「本当びっくりだよな。茜ちゃんにはいつも息子がお世話になってます」
茜父「いえ、こちらこそ娘がお世話になって」
『』は心の声
一也『最悪だ……』
由香『不倫相手の旦那さんに仕事の依頼とか……なんて泥沼……』
一也父「ご注文は?」
茜父「ケーキでも食べるか?」
茜「いらない。食べたくない」
茜父「……すみません。じゃあ珈琲と紅茶で」
由香『そりゃ母親の不倫相手の作ったケーキなんて食べたくないよね……』
茜父「お前も親に言いたくないことの1つや2つあるだろうから無理に聞こうとは思わない。でもな、だからと言ってずっと不機嫌そうにして周りに当たるのはどうかと思うぞ」
茜「それは……悪かったと思ってる」
茜父「お爺ちゃんでもお婆ちゃんでも、誰かに話してみたらどうだ」
一也『無理! 絶っ対無理!』
茜父「みんな最近茜の元気がない。ぼんやりしてるって心配してる。お母さんも……」
茜「お母さんなんか知らないっ!」
茜父「……やっぱりか。お母さんに対するお前の態度、あまりにも酷いんじゃないか? 目に余るぞ。茜に避けられてるけど、心当たりがないって気にしてた」
一也『そう言えば父さんはおじさんの書のファンなんだよな。茜の母さんのこと、知らないで付き合ってるのかな……』
効果音 店のドア
茜母「こんにちはー」
一也「!?」
一也父「いらっしゃい。丁度茜ちゃん来てるよ」
一也・由香『知ってたの!?』
効果音 机、椅子 ガタッ
茜父「茜、座りなさい」
茜母「……。あ、隆也君、これ頼まれてたお花」
一也父「ありがとう。流石だね、イメージ以上だ」
茜母「気に入ってもらえて良かった。基本的なお手入れの方法はこの間話した通りだけど、なにかわからないことがあったら連絡して。一応名刺も渡しとくわね」
一也父「ありがとう。もしかしてこれが雅号ってやつ? プロみたいだ」
茜母「¨みたい¨じゃなくてプロなんですーっ」
由香「……」
一也「あの……父さん? 茜の母さんのこと知ってるの?」
一也父「あれ? 言ってなかったか? 小学校の同級生なんだ」
一也・由香・茜「同級生!?」
***
茜母「あははっ! やだもー、一也君ったら面白~い!」
一也父「不倫って……なんでそうなるんだよ……」
茜父「(笑い堪えてる)」
茜母「この間同窓会で卒業以来初めて会ってね、話してみたら茜のクラスメイトのお父さんで、お父さんに仕事の依頼もしたって言うからびっくりしちゃって」
一也父「まさか灯ちゃんが茜ちゃんのお母さんで、立花先生の奥さんだったなんて。やー世間は狭いね」
一也「で、でも! この間花屋でデートしてたじゃん」(茜父のことを少し気にしながら)
一也父「デートってお前……。丁度店に飾る花が欲しくて、生け花作家をしてるって言うから相談してたんだよ」
茜母「隆也君ったら『どかーん!って感じで!』とか言うから意味わかんなくって、実際にお花見に行ったの」
由香「どかーん!って……」
茜「流石一也のお父さん……」
一也「じゃあブライダルショップの前にいたのは?」
茜母「あれは隆也君ののろけ話聞いてたのよ」
由香「のろけ話?」
茜母「由利ちゃん、二人のお母さんね。由利ちゃんとも私同級生で、卒業してから疎遠になっちゃったんだけど当時は凄く仲良しだったの。ショップに飾ってあるドレスが結婚式で由利ちゃんが着たドレスに似てる。あの時の由利香はキレイだったーって」
一也父「わー! 待った待った! その話ダメ!」
一也「じゃあじゃあ、その後……その、抱き締めて……キスしてたのは?」
一也父「はぁっ!?」
茜母「やーね。私が転びそうになったのを支えてくれたのよ」
一也父「その時髪に葉っぱが付いてるのに気づいて取ってあげただけだって」
一也「なんだよ人騒がせな……」
茜「人騒がせなのはあんたでしょ!」
由香「お兄ちゃんがお父さんの恋人に間違いない!なんて言うから……」
茜母「こんなに旦那さんに愛されてて由利ちゃんが羨ましいなー。なー(茜父に向かって)」
茜父「灯……」
茜母「だっていっつも余裕ぶっちゃってさ、ちょっとくらいヤキモチ妬いてくれたっていいのに」
茜父「信用してるからかな」
茜母「もう! そんなこと言われたら何も言い返せないじゃない!」
茜「人前でいちゃつかないで!」
***
一也「……ってわけで、勘違いだった」
秀一「まったく人騒がせな……」
一也「だろー?」
秀一「君がな」